ウォン・カーウァイのグランドマスターを観る。
同監督にしては珍しくカンフーアクション映画!と思いきや、イップマンというカンフーの達人の伝記のような話であった。
カンフーの流派の南北統一を目指すカンフーの使い手達が、戦争によって翻弄されていく様をウォン・カーウァイらしくセンチメンタルに美しく描いている。本格的なアクションシーンはあるものの、血湧き肉踊る!というよりはカンフー動きの美しさが印象に残る。特にイップマンとパオメイの戦いのシーンはまるでダンスのよう。ニジニジッと移動する足のアップ。カンフーシューズが凄く可愛い。
淡々とフワフワと進む物語の中で、私の心にぐっと迫ったのは、チャン・ツィー扮するパオメイの香港でのシーン。結婚をする事もなく武道に身を捧げた彼女は、(恐らく戦いの傷のせいもあり)アヘンを吸うようになり、すっかり生気のない姿に。茶屋で独り言のようにイップマンに思いを伝える言葉に、彼女の心の強さと諦めを感じた。
「本当の事をいうとあなたが好きだった。何も期待していないわ。ただ好きなだけ。好きに罪はない。」
何かを選ぶために何かを切り捨ててきた彼女の、人生に対する未練を感じる。強烈に生きてきた人の後悔。なんで人生って一度しかないんだろ。
ウォン・カーウァイの映画はいつも美しい。今回も出てくるチャイナドレスがとてもキレイ。特に翡翠のアクセが凄く素敵で、土産物屋なんかでは一度も欲しいって思った事ないけど、今なら多分買う。
このシーンは、まるで絵画を観るようですね。
影が薄かったイップマンの奥さん。
ほらほらこのカンフーシューズ!