次の旅行はモロッコに決めました。
という事で手に取った本。
モロッコの古都、フェズのハーレムに住む少女ファティマ(子供時代の作者)の話。
ハーレムというと女性達が一人のスルタンを巡り美しさを競う怪しい場所を想像しますが、この本の舞台は親子や兄弟が寄り集まって住む裕福な大家族的な意味合いを持つハーレム。一夫多妻が認められている上に、出戻りのおばさんや、なぜか流れ着いてきた奴隷出身の女性などがいるので、実にたくさんの人間がお屋敷の中で暮らしています。
女性達はお屋敷から出る事が許されず、コーランを読む意外は教育も受ける事ができません。大所帯の中でプライバシーを保つ事は難しく、趣味の刺繍の材料さえ自分で選んで買う事が許されない。....と、女性に取っては良いとこなしのハーレムですが、外国人の私にとってはタイルばりの中庭や噴水のあるテラス、贅沢な刺繍の施されたカフタンを身につけた女達など、当時のフェズのハーレムの描写が素敵すぎてウットリ。
当時の女性の憧れ。プリンセス アスマハーン。上流階級の出身で、ロマンティックな恋に生きた。優美な容姿なのに、歌声はコブシが効いててちょっと意外ですね。西洋風のファッションをして、人前で男性と踊る事は当時の女性には叶わない事だった。
興味深かったのは、盲目的に伝統とコーランを信じる大人がいる一方で、「反抗する事」をファティマにごく自然に教えようとする大人達がいる事。なぜならば、ハーレムの中で経済力もなく教育もない女は常に弱い存在だから、自分で自分を守るすべを身につけなくてはいけないのだ。誰が権威者なのか、勝ち目はあるのか、状況を見極めて相手を混乱させなさい。一見無力に見える聞き手は、相手を無視するというカードを持っている。大きな瞳であたりを伺う強かな女性が目に浮かぶ。
物語の中には沢山のおいしそうな食べ物も登場してくる。炒ったアーモンド、ハーブとつけ込んだオリーブ、アーモンドジュース(どんなの?)、ハリーア(ハーブでつけ込んだ牛肉)、ユーカリの香りのする蜂蜜、バスティッリャ(鳩のペストリー)、中でも興味を惹かれたのはザリーアという飲み物。洗って乾かしたメロンの種を細かく砕いてミルクと混ぜ、オレンジの花水を数滴とシナモンを加えたもの。どんな味がするのかしら〜。ハンマームで飲むもので、夏のひとときだけ味わえる、とても美味しい飲み物だそう。
最後に、出戻りのハビーバおばさんが語った大好きな言葉。「もし世間が貴女に辛くあたったら、自分の肌を磨き上げて仕返しをしてやりなさい。美しい肌は駆け引きに使えるものなのよ。さもなけりゃ、肌を隠せって私たちに命令する訳がないもの。」落ち込んだときは、私も似た事を考える。とにかく肌さえピカピカなら、たいていの場合は機嫌良くいられるのだ。
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